自転車日本一周

自転車日本一周記

◇或る阿呆はかく語る

　『罰が無ければ、逃げる楽しみも無い』＿＿＿＿

　とか、安部公房みたく格好良く始められたらいいんだろうけど、僕は残念ながら格好よくはなれない。
罪も罰も無く、日常に言い訳ができないから、逃げたのだ。
だから、自分らしく格好悪く、言い訳から始めようと思う。

　この文章に、オチは無い。なのに長い。
馬鹿がチャリで旅立って、馬鹿のまま帰ってくるだけの話だ。だから要約をここに記そう。
　寛容にもここまで読んでくれた人は、今少し我慢して頂いて、以下をみて帰ってくれれば要約がわかるし、
そう人生を無駄にすることはないと思うから。
　この日記は、主に美術館、廃墟を巡りながら自転車で野宿日本一周をした記録だ。

　あと、うまいことして大学をサボり、単位を習得する為の戦いを描いた記録でもあり、
学食研究会会員として全大学学食制覇を志し、スピーディに諦めた記録でもあるような気がする。
雨の中、風の中、雪の中、嵐の中、時には灰の中をこぎ続け、４７都道府県の美術館と廃墟、そして３つの島を巡る。
　瀬戸内に浮かぶアートの島、池島。世界遺産の雨と森の島、屋久島。
そして＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿廃墟の聖地、軍艦島。
他にも標高千メートルオーバー「雲上の楽園」松尾鉱山や、山の中、今も回り続ける観覧車のある廃遊園地などを巡った。

　クルマに二回はねられ、キャッシュカードを無くし、所持金３円でさまよったりもした。アレルギーでぶっ倒れたりもした。
　ネットで知り合った人々にも会った。
優しくしてくれる人にもいっぱいあった。
酷い人もちょっとだけいた。
ホモにも襲われた。
モルモン教徒と神の存在について語り合った。
なぜかシトロエンでドライブしたりした。
ホームレスのおっちゃんと酒を呑んで眠った。
テキ屋のにーちゃんからたいやきをもらった。
音楽プロデューサーに拾われてさんざいい目をみさせてもらった。
知らないおっちゃんに泊めてもらった。
居酒屋のママに奢ってもらった。
議員さんに酒を奢ってもらい、いっしょにカラオケした。
スナックのママに泊めてもらった
自転車で日本を回る仲間とであった。

公園で、道の駅で、山の中で、駐車場で、駅で、古墳で、住宅展示場で、電車の中で、ライダーハウスで、廃墟で。
どこででも、眠った。

たまに死にかけたり、良い思いをしたりしながら、ぐだぐだと過ごした、旅だった。

むぅ。前置きの、しかも言い訳がずいぶんと長くなった。
言い訳に謝罪をかさねて申し訳ない。
しかし、この先を読む者がいるとも思えないし、この謝罪で許して頂こう。
それじゃあ、僕の為に、独りよがりに独り語りを始めよう。

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